ひだまりのようなその形に幸福論と名前をつけたなら

次の日から、朝は誘拐犯さんより早く起きて、朝ごはんを用意するようになった。
誘拐犯さんは帰り道の途中でスーパーに寄って、食材を買ってくるようになった。
大体いつも好きな物を気分で買ってくる誘拐犯さんはどうやら辛い物が好きらしく、麻婆豆腐やらキムチ鍋やら、リクエストがくることもあった。唐突で我儘な誘拐犯さんのおかげで、料理の腕も上達したと最近しみじみ感じる。


そして、誘拐犯さんは私の服も買ってきてくれるようになった。
誘拐犯さんはセンスがいいらしく、シンプルで綺麗な服を買ってくる。ユニクロの白いシャツやガウチョパンツ、そして時々スカート。私が今まで着ようと思わなかったような服も買ってくるから困ってしまうけれど、誘拐犯さんが買ってくる服は何故か必ず私に馴染んだ。
自分で選ぶよりよっぽど素敵な洋服を買ってきてくれるので、それを着たいがために外出する機会も増えた。

もしかするとそれが狙いなんじゃないかなと思うこともあるけれど、結果的に得をしているので問題はない。



相変わらず誘拐犯さんはいけない大人で、私の事情を何も聞いてこないことをいいことに身の上話はお互いに一切せず、ただずるずるとこの西日の射す部屋に入り浸っていた。
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