ひだまりのようなその形に幸福論と名前をつけたなら

そして特に変わりなく退屈な授業を受けて、部活をしていない私はまた電車に乗って帰る。

駅から歩くときスーパーに寄って食材を買って、家について夕食を作ろうと袋の中身を見た。

「あー…二人分買っちゃったよ…」


自分のほかに食べてくれる人などいないというのに、この量の野菜は使い切れない。完全に無意識なのだから逆に危ない。
仕方がないから、野菜室に詰め込んだ。


短い時間で作った夕食を並べて手を合わせる。
ひとりで食べる夕食は、味が有る筈なのに何も感じない。
ついに味覚まで可笑しくなったか。けれど誘拐犯さんの家にいた時は何でもおいしく感じたのを思い出して、ああ寂しいだけかと思い至った。こんな私でも寂しいという感情が生きていたのかと、正直とても驚いた。


その日もテレビも何も見ず、布団に入って目を瞑った。
瞼を閉じても明るさが変わらないくらいに、この部屋は薄暗い。


そんなサイクルの日々が1週間続いた。
< 25 / 108 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop