ひだまりのようなその形に幸福論と名前をつけたなら
日曜日は中々布団から出られず、暫く毛布に包まっていた。
こうして寝ていると、誘拐犯さんが「ほら、起きな」って起こしてくれそうで、けれどもうここにはいないと思い知る。
こんなにも大きな未練を残しておいて、よくも自分から降ろしてなどと言えたものだ。
この1週間。誘拐犯さんの面影はことあるごとに現れた。
もしかするとそれは、恋なのかもしれなかった。
愛なのかもしれなかった。
けれど本当はそのどちらでもなくて、ただの執着だったのかもしれなかった。
どちらにしても、それが未練であることに違いはなかった。
喪失感。劣等感。
もう随分感じていなかった感情の発作が、とめどなく頭に流れ込んでくる。あの部屋にいたときは、とっくに忘れてしまえたのになあ。
胸を焦がす。頭が痛い。
パラメーターは既に行方不明。濁った感情を他人の胸にぶちまけて、やり場の無いもどかしさに蹲ってしまいたい。
痛い。痛い、いたい、いたい。
鎮痛剤など有る筈もなく、大人しくしている以外に方法はない。
部屋の隅で小さく三角形になっていた。