ひだまりのようなその形に幸福論と名前をつけたなら
その温かい声が染み込んで、発作を止めてくれる。鎮痛剤はここにあったと、反射的に脳が錯覚をするほどに。
電話の奥で、誘拐犯さんがかすかに笑ったのが分かった。
『泣かないの?』
この言葉が揶揄いじゃないことは一瞬で分かった。
聞いてくれるのだろうか。いやきっと、このお人好しの誘拐犯は私の話に耳を傾ける。
「泣けないの。」
『…それは、どうして、』
電話越しの声が、遠慮がちに揺れたのが分かった。
もしかしたら私のことに少しでも興味を持ってくれている、のだろうか。そうであれば少しだけ嬉しいと思う。
****
それはとても、簡単なことだった。
言葉ひとつ。
母の言葉は、私にとってとても大きなものだった。
電話の奥で、誘拐犯さんがかすかに笑ったのが分かった。
『泣かないの?』
この言葉が揶揄いじゃないことは一瞬で分かった。
聞いてくれるのだろうか。いやきっと、このお人好しの誘拐犯は私の話に耳を傾ける。
「泣けないの。」
『…それは、どうして、』
電話越しの声が、遠慮がちに揺れたのが分かった。
もしかしたら私のことに少しでも興味を持ってくれている、のだろうか。そうであれば少しだけ嬉しいと思う。
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それはとても、簡単なことだった。
言葉ひとつ。
母の言葉は、私にとってとても大きなものだった。