ひだまりのようなその形に幸福論と名前をつけたなら
「じゃーん、完成―!」

然程時間も経たずして冷やしそうめんは完成した。
テーブルの上には大盛りの冷やしそうめんと、別皿に盛った薬味と具。


「冷やしそうめんはね、何でも合うの!だから、取り敢えず冷蔵庫にあったもの並べてみました」

「君らしいね」


キュウリ、錦糸卵、焼き豚、とろろ、ツナ、トマト、納豆、ネギ、大葉、青じそ、梅干し。
テーブルから溢れんばかりに並べられた具や薬味が彩りを与え、今にもお腹が鳴ってしまいそうだ。


「これ、全部食べれなかったどうするの?」

「その時はまた考えるよ。それよりほら、早く食べよう!」


誘拐犯さんを急かすようにして座った私たちは、手を合わせる。
箸を取った誘拐犯さんは納豆が意外だったようで、真っ先に箸を伸ばした。


「それはね、ゴマ油と醤油混ぜてるから、美味しいと思うよ」

「へぇ、ちょっと意外だけど、美味そう」



納豆を乗せて、そうっと口に運んだ誘拐犯さんの目が、またもや意外そうに開かれる。


「…これ、予想以上。結構好きかも、俺」

「よかった」



どうやら気に入った様子の誘拐犯さんに、私は目を細める。

食べられなかったらなんて言っていたのに黙々と食べる様子に、私は嬉しくなる。
細い体をしているのによく食べるなぁと常々思うが、私も負けじとそうめんを啜った。



冷えたそうめんは爽やかな風を運び、ほてった身体を冷やしてくれる。
飽きないように色々な具と合わせてめんを啜りながら、次は何を一緒に食べようかと考えていた。
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