ひだまりのようなその形に幸福論と名前をつけたなら
けれど揶揄われっぱなしというのは何だか腑に落ちず、私は少しだけ歩幅を広めて誘拐犯さんから距離を取るとその場にしゃがみ込んだ。首に下げていたカメラが滑り落ちて、ストラップに止められて跳ねた。
「———どこにいったの?」
暫くしてひょこひょこと動いていた頭が見えなくなったことに気付いた誘拐犯さんが息の抜けた声を上げた。
今、どんな顔をしているのだろう。
高い高い、ひまわりより高いその先にある表情を見てみたい気持ちをそっと抑えて、じっと息を殺す。
「…ねぇ、どこ。どこいったの」
焦ったような声。それはまるで、迷子になった幼い子供。誘拐犯さんの方が随分と年上だけど、今ばかりはその表現が合っていると思った。それ程までに酷く不安定に揺れる声。がさがさと花を退ける手足はいささか乱暴で。
ねぇ、と何度目かの声が上がったとき、立ち上がってその手を取った。