ひだまりのようなその形に幸福論と名前をつけたなら
自分の嗚咽で外の音など聞こえない。それでもひとつ、はっきりと聞こえる音があった。
鍵が開く音。ずっと待っていた。バタバタと騒がしい音と同時に玄関のドア開いた。
弾かれるように顔を上げれば、スーツを着て息を乱した誘拐犯さんの姿があった。
「ごめ、会議大分長引いて…ッ………泣いて、るの?」
私は顔を上げたまま、ぼろぼろと涙を零していた。
私に近づいた誘拐犯さんは驚いたように目を見開いて、私の頬に触った。
「………花火、終わっちゃったよ」
「…うん、ごめん」
「嘘つき」
「…うん」
「…楽しみにしてたのに」
「うん、俺もだよ。ごめん」
ごめん、ごめんと謝りながら私の涙を拭う。
目は一度も合わなかった。誘拐犯さんの伏せられた長い睫毛が震えている。
「………嫌われたと、思った」
捨てられたわけじゃなかった。こんな私を、誘拐犯さんはまだ捨てないでいてくれる。
その事実が嬉しくて悲しくて、何だかもうよく分からなくって、また涙が止まらなくなってしまった。
誘拐犯さんは私の手が一瞬動きを止める。私がまた泣いたことに驚いたのか、それとも私の発言に驚いたのか。
「…どうして、そんなこと言うの」
鍵が開く音。ずっと待っていた。バタバタと騒がしい音と同時に玄関のドア開いた。
弾かれるように顔を上げれば、スーツを着て息を乱した誘拐犯さんの姿があった。
「ごめ、会議大分長引いて…ッ………泣いて、るの?」
私は顔を上げたまま、ぼろぼろと涙を零していた。
私に近づいた誘拐犯さんは驚いたように目を見開いて、私の頬に触った。
「………花火、終わっちゃったよ」
「…うん、ごめん」
「嘘つき」
「…うん」
「…楽しみにしてたのに」
「うん、俺もだよ。ごめん」
ごめん、ごめんと謝りながら私の涙を拭う。
目は一度も合わなかった。誘拐犯さんの伏せられた長い睫毛が震えている。
「………嫌われたと、思った」
捨てられたわけじゃなかった。こんな私を、誘拐犯さんはまだ捨てないでいてくれる。
その事実が嬉しくて悲しくて、何だかもうよく分からなくって、また涙が止まらなくなってしまった。
誘拐犯さんは私の手が一瞬動きを止める。私がまた泣いたことに驚いたのか、それとも私の発言に驚いたのか。
「…どうして、そんなこと言うの」