ひだまりのようなその形に幸福論と名前をつけたなら
「だって…だって、誘拐犯さんのこと私に何も教えてくれない。名前だって知らない…」
「…それは、お互い様でしょ。元からそういうつもりで、俺たちは」
「違うッ!!」
気付けば大きな声で叫んでいた。
違う、こんなことが言いたかったわけじゃない。ただ一緒にいたくて、傍に居いてほしくて、好きで好きで。
それだけなのに。
「何もお互い様じゃない!私の家のこと、学校のこと、誘拐犯さんは全部知ってる。なのに、誘拐犯さんは何も教えてくれない。教えてくれないくせに………いつも、違うもの見てるもの。私のことなんて、一度だって、見てくれたことないもん」
外は静まり返り、部屋も静まり返り、私の声と誘拐犯さんの息遣いだけが響いていた。
「ちゃんと言ってよ…なんで何も教えてくれないの?いつも誰の事見てるの?私を、誰に重ねてるの…っ?」
言ってしまって、気づく。泣きそうな顔をしていた。誘拐犯さんがとても悲しい顔をしている。そんな顔はしてほしくない。けれど誘拐犯さんをそんな顔にさせたのは紛れも無く私で、もう消しゴムで消すことなんてできなかった。
「…それは、お互い様でしょ。元からそういうつもりで、俺たちは」
「違うッ!!」
気付けば大きな声で叫んでいた。
違う、こんなことが言いたかったわけじゃない。ただ一緒にいたくて、傍に居いてほしくて、好きで好きで。
それだけなのに。
「何もお互い様じゃない!私の家のこと、学校のこと、誘拐犯さんは全部知ってる。なのに、誘拐犯さんは何も教えてくれない。教えてくれないくせに………いつも、違うもの見てるもの。私のことなんて、一度だって、見てくれたことないもん」
外は静まり返り、部屋も静まり返り、私の声と誘拐犯さんの息遣いだけが響いていた。
「ちゃんと言ってよ…なんで何も教えてくれないの?いつも誰の事見てるの?私を、誰に重ねてるの…っ?」
言ってしまって、気づく。泣きそうな顔をしていた。誘拐犯さんがとても悲しい顔をしている。そんな顔はしてほしくない。けれど誘拐犯さんをそんな顔にさせたのは紛れも無く私で、もう消しゴムで消すことなんてできなかった。