ひだまりのようなその形に幸福論と名前をつけたなら
「…ごめん。また君を泣かせた。幸せになるために君は此処にいるのに、俺はずっと君を見ないままだった。いつも悲しい顔させた。……最低だな、俺、ほんとに」
悲しい顔のまま、泣きそうに笑った。
「違う…そんなこと言ってほしいんじゃないの。ただ…ただ、私は」
「じゃあどうしろって言うんだよッ」
今度は誘拐犯さんの声だった。大きな声を聞いたのは数えるほどしかなくて、私はびくりと肩を揺らしてしまった。氷がカランと場違いな音を立てて溶けた。
「…どうしろって言うんだよ…君は俺のことを知っても、それでもまだこの部屋にいてくれる?ここで笑ってくれる?怖いんだよ、君が、大切な人が、いなくなるのはもう嫌だ」
打ち明けた声が震えていた。
その言葉の奥に一体どんな悲しみがあるのか私には分からず、私は手を伸ばして億劫にその頬に触れた。あたたかな体温。この人も私も、確かに此処にいるのだ。
ごめんなさい。好きです。何故謝るのかも分からずに、ただそう伝えたかった。
「…やっぱり、君には敵わないや。俺は君に随分と弱いみたいだ」
泣きそうな目を細めて笑った後、誘拐犯さんは立ち上がって何かを取りに行った。
それは引き出しの中、大切に大切にしまってあったようだった。
「…これ、手紙?」
一枚の手紙。何度も何度も読み返したのだろうか、紙は柔らかくなり、所々に涙の跡の様なものがあった。
「……読んで。君に、読んでほしい」
私は一つ頷いて、ゆっくりと、その手紙を読み始めた。
悲しい顔のまま、泣きそうに笑った。
「違う…そんなこと言ってほしいんじゃないの。ただ…ただ、私は」
「じゃあどうしろって言うんだよッ」
今度は誘拐犯さんの声だった。大きな声を聞いたのは数えるほどしかなくて、私はびくりと肩を揺らしてしまった。氷がカランと場違いな音を立てて溶けた。
「…どうしろって言うんだよ…君は俺のことを知っても、それでもまだこの部屋にいてくれる?ここで笑ってくれる?怖いんだよ、君が、大切な人が、いなくなるのはもう嫌だ」
打ち明けた声が震えていた。
その言葉の奥に一体どんな悲しみがあるのか私には分からず、私は手を伸ばして億劫にその頬に触れた。あたたかな体温。この人も私も、確かに此処にいるのだ。
ごめんなさい。好きです。何故謝るのかも分からずに、ただそう伝えたかった。
「…やっぱり、君には敵わないや。俺は君に随分と弱いみたいだ」
泣きそうな目を細めて笑った後、誘拐犯さんは立ち上がって何かを取りに行った。
それは引き出しの中、大切に大切にしまってあったようだった。
「…これ、手紙?」
一枚の手紙。何度も何度も読み返したのだろうか、紙は柔らかくなり、所々に涙の跡の様なものがあった。
「……読んで。君に、読んでほしい」
私は一つ頷いて、ゆっくりと、その手紙を読み始めた。