ひだまりのようなその形に幸福論と名前をつけたなら
「ねぇこれ!これ観たい、この映画!」

昨日の約束通り、その日は外出は一切せず室内でだらだらと過ごしていた。
とはいえ、この部屋に住み着いてからというものすっかりアウトドア派になってしまった私は一日中寝ているというわけにもいかず、部屋を漁りまくった末に一本のDVDを見つけたのだった。

しかし、言ってみてからその無神経さに気付く。
映画など観そうにない誘拐犯さんが唯一取っておいたDVDだ。きっと手紙の女性と見た大切な思い出なのだろうと胸が締め付けられる思いがした。


「いいよ、見よっか」


けれど返ってきた返事はあっさりとした簡単なもので、私はぽかんとしてしまった。

「…いいの?」

「いいよ。なんで?」

「…これ、りささんと見たやつでしょ?」

「うん、りさが好きだったやつだね。懐かしいなー…」


全く躊躇う様子のない誘拐犯さんに逆に私が戸惑ってしまう。
昨日のことは夢ではなかったと安堵する反面、それでもまだ不安で気にかけてしまう自分がいるのだ。

自分から出しておいて情けないと思いつつ、恐る恐る聞いた。

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