ひだまりのようなその形に幸福論と名前をつけたなら
「…よーし、明日は何しよっか!」

「やる気満々なところ悪いけど、君明日から学校じゃない?」

「……えっ」

「え、まさかほんとに忘れてたの?ていうか宿題は?やってる気配全然なかったけど」


勢いよく起き上がって尋ねれば、怪訝そうな目で見られてしまった。
それでも数秒後には可笑しそうに顔を綻ばせて笑って答えてくれるのだ。

私が声をかければ誘拐犯さんが笑ってくれる。

不安だしこわいし、離れるのは嫌だけど、それでもこの人の笑顔を見てしまうと一瞬だけ心が軽くなるのはいつものこと。随分、というか完全に絆されているのだ、この人に。


いつか離れる日のことは今は考えないでおこう、と頭の奥底にそっとしまい込んだ。
きっとそれを考えなければいけないのは今じゃない。
頃合いを見て、少しずつ克服すればきっと大丈夫。


自分の中でそう都合よく現実逃避をしては、大切な人の笑顔があるという事実をしっかり噛みしめた。

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