磁石の定義
夏休み間近。
梅雨の湿気はすっかり消えて、世間には初夏のにおいが漂っている。





「千代ちゃん、あなた今日 参観日で親御さんがいっぱいいたのに、こんなボサボサの髪のまま学校行くから。
参観の間中 お母さん恥ずかしいったらなかったよ!」
帰ったらいきなりこれか。
「そんなこと言って、お母さん 祐一兄の教室に入り浸りだったじゃん!私の授業なんて5分も見てなかったよ」
負けじと言い返す。
絶対私の方が正論。

「それは・・ あっ!」
なにかを思い出したようで、お母さんが早口でしゃべる。
「千代ちゃん、聞いてよ!さっき祐一の授業見てたら、隣の教室から和也くんのお母さんが出てきて――」
「和也くんのっ?」

話を遮られたお母さんは、少し不満げに
さっきより少しゆっくりめに続けた。
「そう・・それでね、久しぶりだったから色々話してたら時間が過ぎちゃってね、」
「ふーん。そうなんだ」
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