磁石の定義
彼女いるらしいよ――
あの日から、頭の中であの言葉が反芻して、離れない。



彼女いるらしいよ。






彼女?


超綺麗な人――






「ちょっと、千代ッ!!?」



いきなり名前を呼ばれて、現実に返る。

「えッ!!? 」

「もうー、千代ったら何回呼んでも気付かないじゃん。」

びっくりしちゃったーと、明穂が無邪気に笑う。


「どうしたの? 最近元気無いよ?」

突然の言葉にびっくりする。
「そんなことないよ?
朝だってご飯2杯おかわりしたしー」

「食べ過ぎー」
明穂がまた、けらけら笑う。

「ねえ千代、」
明穂が言葉を続ける。「あんまり無理しちゃ駄目だぞっ。
辛いことがあったら明穂チャンに相談しなサイ。」

ああ。明穂はなんでもお見通しなんだな。
親友だもんね。

「ありがと。」
明穂をぎゅーって抱きしめる。

「でも、私は大丈夫だからね、明穂」

本当?
ならいいの。
明穂はそう言って、にっこりと笑った。
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