バックハグは恋の始まり!?
食事を終えた私は「先に戻るね」とほかの同期に言って、足早に食堂を去った。
早く柴崎くんから離れて、一人で冷静になりたかった。
それなのに・・・誰かが私を追いかけてくる気配がする。
誰なのか疑問に思いつつも足を進めていると、
「待てよ、藤元・・・。」と言う柴崎くんの声が聞こえてきた。
追いかけてくるのが彼だと気付いた私は追いつかれまいと一生懸命、早足で廊下を歩く。
でも長身の彼は私と違い、足も長くて距離を徐々に詰めてくる。
そして、ついには手首を掴まれてしまった。
彼は回り込むようにして、私の手首からは手を離さずに私の前に立ちふさがった。
私は早足で歩いたので、少し呼吸が乱れているのに彼からはそんな様子は見受けられなくて・・・こんな時も自分だけ振り回されている気がしてイヤになる。
私の発する不機嫌オーラを感じ取ってか、彼も居心地が悪そうに黙り込み、私の手首から腕をを離してくれた。
私は彼との沈黙を破ろうと口を開いた。
「なっ、な・・・「ごめん!・・・」」
彼に食堂であんな行動をした理由を問いただそうと口を開いたら、私の質問を遮るように彼が謝ってきた。
彼からのストレートな謝罪の言葉に私も思わず黙り込んでしまう。
「人目があるところで、それも同期が目の前にいたのに・・・ほんとごめん。
藤元の気持ちもちゃんと考えるべきだった。
金曜に告白したばっかりなのに混乱させるだけだよな・・・。」
彼が申し訳なさそうな声色で謝罪の言葉を口にするから、私の中のイライラもだんだんと収まってきた。
仕方なく、俯いていた顔を上げると、決まりが悪そうな顔をした柴崎くんと目が合った。
怒りは収まったが、彼がなぜあんな行動をしたのか理由が気になって、思い切って尋ねてみる。
「な、何であんなことしたの?
あんな強引なこと、するなんて柴崎くんらしくないし・・・
そもそも大勢の人の前でもあんな事する人だったの?」
彼があんなキザな事をしないタイプだと思ってたわけじゃない。
でも、彼はモテるオーラが出てる割にさっきみたいな事をするイメージが無くて、思わず尋ねてしまう。