あなたが生きるわたしの明日
柔らかな鐘の音の有名な音楽がスピーカーから流れてきた。
壁にかかった時計を見るとちょうど九時だから、始業の合図といったところなのか。
時計を見たついでに、壁にひびが入っているのが目に入ってしまい、また悲しい気持ちになってしまった。
きっと、この同じ鐘の音を、この他のきらきらしたフロアの人も平等に聞いているのかと思ったら、さらに悲しい気持ちになる。
「おはようございまぁす」
鐘の音が鳴りやむと同時にドアが開き、きれいなお姉さんが鼻歌を歌いながら入ってきた。
腰までのやや茶色の髪をゆるく巻き、白のふんわりとしたブラウスに、カーキのワイドパンツを合わせていて、とってもおしゃれだ。
爪にはベージュのネイルと大ぶりのストーンが光っているし、ぱっちりとした目元にはかなり長めのマツエクがついていた。
さっき通ってきた部屋にたくさんいたようないかにもOLさんといった出で立ちで、一瞬間違って入ってきたのかと思ったけど、お姉さんは慣れた様子で女性ファッション誌と手鏡の置いてあるデスクに座ると、手鏡を見ながら、髪の毛の乱れを整える仕草をした。
全く髪の毛は乱れてなんかいなかったのだけど。
社員証に目をやると『江原亜樹(えはらあき)』と書いてあった。
「おはよう、亜樹ちゃん」
「はぁ?」
鏡の角度を変えながら自分の顔を見ていた亜樹ちゃんは、ものすごく大きな声をだした。
「亜樹ちゃんってなんですか?」
「え、あだ名。今日からそう呼ぼうかなって思って」
「怖い怖い! どうしちゃったんですか? 課長!」
亜樹ちゃんは手鏡をデスクの上に伏せて置くと、救いを求めるように残りの二人の顔を交互に見た。
「なにかあったの?」
まだ涙目のほっちゃんが黙って首を横に振る。
あだ名で呼んだくらいでこんなに驚かれるなんて。
お仕事をしている人はあだ名で呼びあったりしないのだろうか。
それとも、陽子さんのキャラの問題なのだろうか。
壁にかかった時計を見るとちょうど九時だから、始業の合図といったところなのか。
時計を見たついでに、壁にひびが入っているのが目に入ってしまい、また悲しい気持ちになってしまった。
きっと、この同じ鐘の音を、この他のきらきらしたフロアの人も平等に聞いているのかと思ったら、さらに悲しい気持ちになる。
「おはようございまぁす」
鐘の音が鳴りやむと同時にドアが開き、きれいなお姉さんが鼻歌を歌いながら入ってきた。
腰までのやや茶色の髪をゆるく巻き、白のふんわりとしたブラウスに、カーキのワイドパンツを合わせていて、とってもおしゃれだ。
爪にはベージュのネイルと大ぶりのストーンが光っているし、ぱっちりとした目元にはかなり長めのマツエクがついていた。
さっき通ってきた部屋にたくさんいたようないかにもOLさんといった出で立ちで、一瞬間違って入ってきたのかと思ったけど、お姉さんは慣れた様子で女性ファッション誌と手鏡の置いてあるデスクに座ると、手鏡を見ながら、髪の毛の乱れを整える仕草をした。
全く髪の毛は乱れてなんかいなかったのだけど。
社員証に目をやると『江原亜樹(えはらあき)』と書いてあった。
「おはよう、亜樹ちゃん」
「はぁ?」
鏡の角度を変えながら自分の顔を見ていた亜樹ちゃんは、ものすごく大きな声をだした。
「亜樹ちゃんってなんですか?」
「え、あだ名。今日からそう呼ぼうかなって思って」
「怖い怖い! どうしちゃったんですか? 課長!」
亜樹ちゃんは手鏡をデスクの上に伏せて置くと、救いを求めるように残りの二人の顔を交互に見た。
「なにかあったの?」
まだ涙目のほっちゃんが黙って首を横に振る。
あだ名で呼んだくらいでこんなに驚かれるなんて。
お仕事をしている人はあだ名で呼びあったりしないのだろうか。
それとも、陽子さんのキャラの問題なのだろうか。