あなたが生きるわたしの明日
私が陽子さんに憑依して三日目の朝。
昨日、しっかりとメイクも落として寝たせいか、今朝は肌の調子もいい。
陽子さんは決して派手な美人顔ではないけれど、きちんとメイクをすれば歳よりも若く見える。
陽子さんのメイクポーチにはベースメイクの道具しか入っていなかったから、陽子さんはあまりメイクはしなかったみたいだけど、それじゃあもったいないと思う。
朝からファイルにラベルシールを貼る作業をやっている。
作業自体は慣れてくれば簡単なものだ。
中身を見て、そこに書かれたタイトルのシールを印刷し、めくって貼るだけ。
ラベルシールが貼れたファイルは部署ごとに棚割りをしたところに並べていく。
単調な作業だから、たまに私は飽きてきてしまうのだけど、ほっちゃんはこの単調な作業を一度も手を休めることなく続ける。
こういう細かい作業がほっちゃんは好きなのかもしれない。
私も含めた他の三人は、たまに休憩して飲み物を買いにいったり、亜樹ちゃんは鏡で髪型をチェックしたり、凪くんは無駄におしゃべりをしてみんなにスル―されたりしているのに、ほっちゃんだけは黙々と続けている。
この集中力を、前にいた部署で生かせたらよかったのにと思う。
亜樹ちゃんはほっちゃんほどの集中力はないけれど、見ているとものすごく仕事をきっちりとしているのがわかる。
背表紙にシールを貼る時に、ほんの少しのズレもないように貼るのだ。
もし少しでもずれてしまうと、はがしてもう一度シールを出し、貼りなおしている。
こういうきっちりしている人が一人でもいると、常に整理整頓されてすごく仕事がしやすいと思う。
凪くんにはほっちゃんほどの集中力も亜樹ちゃんほどの几帳面さもないのだけど、その代り、仕事のスピードがものすごく早い。
ラベルシールを出すのも早いし、貼るのも早い。
だから、凪くんの担当している棚は私の倍ほどのファイルがなくなっている。
シールの貼れたファイルを部署ごとに置いていこうと提案して棚割りを考えてくれたのも凪くんだ。
きっと効率よく作業を進めていける人なのだろうと思う。
「今日のランチどこ行く?」
作業の合間、肩を回すストレッチをしながら、みんなに話しかけた。
陽子さんの体はすぐに肩や腰が痛くなるのだ。
初日に社員食堂へ行ってほっちゃんが泣いてしまってから、社員食堂には行きにくくなってしまった。
また陰口を言われるかもしれない。
私は自分のことじゃないから平気なのど、ほっちゃんが泣くのがつらいのだ。
だから、昨日は四人で会社を出て亜樹ちゃんがおすすめだというおしゃれなイタリアンのお店でパスタを食べた。
今日もランチはどこかすてきなお店で食べたいと朝から楽しみにしていたのだ。
「昨日はイタリアンだったから和食もいいですよね」
亜樹ちゃんが言うと、凪くんが「あ、そうだ」と口をひらいた。
「ランチもなんですけど、今日金曜日だし、みんなで飲みに行きません? 課長の歓迎会もまだやってないし」
金曜日に仕事仲間と飲みに行く!
これは、私がやりたかったことのひとつじゃないか!
「行く行く!」
思わず大きな声で返事をする。
他の三人は一瞬驚いた顔をしたけれど、すぐに笑顔になった。
「じゃあ決まりですね」と亜樹ちゃんが言って、私はくふふと笑った。
昨日、しっかりとメイクも落として寝たせいか、今朝は肌の調子もいい。
陽子さんは決して派手な美人顔ではないけれど、きちんとメイクをすれば歳よりも若く見える。
陽子さんのメイクポーチにはベースメイクの道具しか入っていなかったから、陽子さんはあまりメイクはしなかったみたいだけど、それじゃあもったいないと思う。
朝からファイルにラベルシールを貼る作業をやっている。
作業自体は慣れてくれば簡単なものだ。
中身を見て、そこに書かれたタイトルのシールを印刷し、めくって貼るだけ。
ラベルシールが貼れたファイルは部署ごとに棚割りをしたところに並べていく。
単調な作業だから、たまに私は飽きてきてしまうのだけど、ほっちゃんはこの単調な作業を一度も手を休めることなく続ける。
こういう細かい作業がほっちゃんは好きなのかもしれない。
私も含めた他の三人は、たまに休憩して飲み物を買いにいったり、亜樹ちゃんは鏡で髪型をチェックしたり、凪くんは無駄におしゃべりをしてみんなにスル―されたりしているのに、ほっちゃんだけは黙々と続けている。
この集中力を、前にいた部署で生かせたらよかったのにと思う。
亜樹ちゃんはほっちゃんほどの集中力はないけれど、見ているとものすごく仕事をきっちりとしているのがわかる。
背表紙にシールを貼る時に、ほんの少しのズレもないように貼るのだ。
もし少しでもずれてしまうと、はがしてもう一度シールを出し、貼りなおしている。
こういうきっちりしている人が一人でもいると、常に整理整頓されてすごく仕事がしやすいと思う。
凪くんにはほっちゃんほどの集中力も亜樹ちゃんほどの几帳面さもないのだけど、その代り、仕事のスピードがものすごく早い。
ラベルシールを出すのも早いし、貼るのも早い。
だから、凪くんの担当している棚は私の倍ほどのファイルがなくなっている。
シールの貼れたファイルを部署ごとに置いていこうと提案して棚割りを考えてくれたのも凪くんだ。
きっと効率よく作業を進めていける人なのだろうと思う。
「今日のランチどこ行く?」
作業の合間、肩を回すストレッチをしながら、みんなに話しかけた。
陽子さんの体はすぐに肩や腰が痛くなるのだ。
初日に社員食堂へ行ってほっちゃんが泣いてしまってから、社員食堂には行きにくくなってしまった。
また陰口を言われるかもしれない。
私は自分のことじゃないから平気なのど、ほっちゃんが泣くのがつらいのだ。
だから、昨日は四人で会社を出て亜樹ちゃんがおすすめだというおしゃれなイタリアンのお店でパスタを食べた。
今日もランチはどこかすてきなお店で食べたいと朝から楽しみにしていたのだ。
「昨日はイタリアンだったから和食もいいですよね」
亜樹ちゃんが言うと、凪くんが「あ、そうだ」と口をひらいた。
「ランチもなんですけど、今日金曜日だし、みんなで飲みに行きません? 課長の歓迎会もまだやってないし」
金曜日に仕事仲間と飲みに行く!
これは、私がやりたかったことのひとつじゃないか!
「行く行く!」
思わず大きな声で返事をする。
他の三人は一瞬驚いた顔をしたけれど、すぐに笑顔になった。
「じゃあ決まりですね」と亜樹ちゃんが言って、私はくふふと笑った。