あなたが生きるわたしの明日
「それなのよ」
有名にしたい、とは言ったものの、なにをどうすればいいのか私にはさっぱりわからない。
まさかショッピングセンターの迷子のお知らせみたいにマイクで放送してもらうわけにもいかないだろうし、SNSで拡散してもらうわけにもいかない。
「なにか、いいアイディアない?」
身を乗り出して聞いたけど、みんなは目を伏せてしまった。
「だよねぇ」
私は枝豆に手を伸ばす。
ここのお店の枝豆は少し黒い色をしていておいしい。
塩の加減もとてもいい。
しばらく枝豆を黙々と食べた。
こういう時、会社では一体だれに相談すればいいんだろう。
たとえばこれが学校なら先生だったり、事務の人だったりに教えてもらえるのに。
「……あの」
それまでずっと黙っていたほっちゃんが意を決したように顔を上げた。
「社内コンペ……に応募してみませんか?」
「社内コンペ?」
ほかの二人が声を揃えて聞き返す。
もちろん、私も社内コンペという言葉を初めて聞いたし、なんのことだかまったくわからない。
「社内コンペティションです……あの年度末に毎年一回、開催されるやつ、です。たしか今ちょうど募集期間だったかと……」
隣で亜樹ちゃんがあぁ、と声を出す。
なんのことかわかったらしい。
「なにそれ?」と聞こうとしたら、同じ質問を先に凪くんがしてくれた。
「……新商品の企画を誰でも応募できるんです。会社の活性化を図る目的で、部署に関係なく、個人でもチームでも。……それこそ、新入社員でも。……というのは建前で実際は企画部の方しか参加されてませんが」
ほっちゃんが小さな声で説明する。
「もし……最優秀賞に選ばれたら、その企画は商品化されて、発案者はプロジェクトのリーダーになれるそうです」