あなたが生きるわたしの明日
私と森下さんは駅近くの大きなビルの一階に入っているセルフサービスのコーヒーショップに入った。
このお店はチェーン店で私の住んでいた街の駅前にもお店を出していた。
私はここのブルーベリースコーンが大好きなのだけど、取扱店が決まっているみたいで他のお店ではなかなか置いていないことが多い。
だから、入ってすぐレジの横にブルーベリースコーンが置いてあるのを見て思わず歓声をあげてしまった。
「これ、なかなか置いてないんですよぉ」
あったかいカフェラテとブルーベリースコーンを注文して席に座り、さっそくブルーベリースコーンをかじると懐かしい味がして、鼻の奥がつんとしてしまった。
よく友だちと来て、これを食べながら遅くまでたわいもない話をして笑いあった。
夜遅くまで話していると、だんだんなにを話しても面白いテンションになってしまって、笑いが止まらなくなったことが何回も注意あった。
つい最近のことのはずなのに、ずっと昔、それこそ二十年前みたいな気持ちになる。
もう、私はあの頃の私じゃないし、戻ることも出来ないのだと、改めて気づいてしまう。
そんな私の気持ちを知るはずもない森下さんは、サンドイッチをかじりながら「俺の住んでる最寄り駅の店にもこれ置いてありますよ」とのんびり言った。
「え? 森下さんの住んでるとこって、どこなんですか?」
「あれ? 言ったことなかったですか?」
陽子さんは聞いたことがあったのかもしれないけど、私は知らない。
「言ってなかったかもしれませんね」と言ったあとで、森下さんが答えた駅は、私が住んでいた町の駅名と一緒だった。
「あそこに……住んでるんですね」
私が住んでいた街。
私が私だった頃に住んでいた街。
家族やともだちが今も住んでいる街。
「あ、ご存知ですか? 急行も止まらないし都内まで結構時間かかるし不便なとこなんですけどね。家賃安いしのんびりした街なんで気にいってますよ」
不思議な縁だなと思う。
十八歳だった私が住んでいた街に今住んでいる人とこうして出会ってコーヒーを飲んでいるなんて。
もしかしたら、十八歳だった頃にどこかで会っていたりして。
私は目の前でアイスコーヒーを飲んでいる森下さんの顔をこっそり見つめる。
眼鏡をかけた、いかにも爽やかな森下さん。
どこにでもいそうな普通のサラリーマンだ。
このお店はチェーン店で私の住んでいた街の駅前にもお店を出していた。
私はここのブルーベリースコーンが大好きなのだけど、取扱店が決まっているみたいで他のお店ではなかなか置いていないことが多い。
だから、入ってすぐレジの横にブルーベリースコーンが置いてあるのを見て思わず歓声をあげてしまった。
「これ、なかなか置いてないんですよぉ」
あったかいカフェラテとブルーベリースコーンを注文して席に座り、さっそくブルーベリースコーンをかじると懐かしい味がして、鼻の奥がつんとしてしまった。
よく友だちと来て、これを食べながら遅くまでたわいもない話をして笑いあった。
夜遅くまで話していると、だんだんなにを話しても面白いテンションになってしまって、笑いが止まらなくなったことが何回も注意あった。
つい最近のことのはずなのに、ずっと昔、それこそ二十年前みたいな気持ちになる。
もう、私はあの頃の私じゃないし、戻ることも出来ないのだと、改めて気づいてしまう。
そんな私の気持ちを知るはずもない森下さんは、サンドイッチをかじりながら「俺の住んでる最寄り駅の店にもこれ置いてありますよ」とのんびり言った。
「え? 森下さんの住んでるとこって、どこなんですか?」
「あれ? 言ったことなかったですか?」
陽子さんは聞いたことがあったのかもしれないけど、私は知らない。
「言ってなかったかもしれませんね」と言ったあとで、森下さんが答えた駅は、私が住んでいた町の駅名と一緒だった。
「あそこに……住んでるんですね」
私が住んでいた街。
私が私だった頃に住んでいた街。
家族やともだちが今も住んでいる街。
「あ、ご存知ですか? 急行も止まらないし都内まで結構時間かかるし不便なとこなんですけどね。家賃安いしのんびりした街なんで気にいってますよ」
不思議な縁だなと思う。
十八歳だった私が住んでいた街に今住んでいる人とこうして出会ってコーヒーを飲んでいるなんて。
もしかしたら、十八歳だった頃にどこかで会っていたりして。
私は目の前でアイスコーヒーを飲んでいる森下さんの顔をこっそり見つめる。
眼鏡をかけた、いかにも爽やかな森下さん。
どこにでもいそうな普通のサラリーマンだ。