あなたが生きるわたしの明日
ブルーベリースコーンを食べ終えたところで、私はバッグの中からノートとボールペンを取り出した。

センチメンタルな気分に浸っている場合ではない。
書類整理課のみんなから応援されて会社をを出てきたのだ。
この救世主にきちんと企画書の書き方を教えてもらわなければ。

お砂糖をたくさん入れたカフェラテも飲み干した。
森下さんには「松川さん、ブラックコーヒー派だったのに」と不思議がられたけど、「脳には糖分が必要らしいので」とほっちゃんから聞いたうんちくを並べたら納得したようだ。

「では、お願いします」

ぺこりと頭を下げると森下さんは、いやいやそんな、と恐縮した顔をした。

「ええと、まず、どんな企画なのか教えてもらってもいいですか?」

ノートパソコンを開きながら森下さんが尋ねる。

「ラベルライターあるでしょう? 今日、企画部に返しにいったやつ」

「ああ、ありますね。そう言えば、あれなにに使ってたんですか?」

よくぞ聞いてくれました、と私は心持ち胸を張る。

企画書の書き方を教わるというミッションのついでに、書類整理課の仕事をアピールするという目的もあったのだ。
企画部からは依頼がきたことがないとあの三人も言っていたし。

「書類整理課のファイル、全てにラベルシールを貼ったんです。さらに各部署ごとに棚割りをして確認依頼がきたら五分とかからず確認することができるようになりました」

「ファイル?」

「今まで何年分かの資料が全部置いてありますよ。そう言えば、ここ前はどうしてたっけなーとかそういうことがあればぜひとも書類整理課までご依頼ください!」

決まった……!

渾身のどや顔で森下さんを見る。

「あ、ああ、はい。わかりました……」

リアクションが薄いなぁ。
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