あなたが生きるわたしの明日
「課長! どうでしたか!?」

書類整理課に入ると、私以外の三人がもう出勤していた。
一瞬、もしかして遅刻した!?と勘違いしそうになったけど、壁の時計を見上げると、私の出勤時間はいつも通りだ。

「みんな……今日は早いね」

「俺、社内コンペの企画書のことが気になって」

「私も」

「…わ、私もです」

それでみんな早く会社に来たらしい。

「森下さん、なんて言ってました?」

心配そうなみんなの顔を見渡し、にやりと笑う。

「あのねぇ」

「はい」

「んとねぇ」

「はいっ」

「……えーっとねぇ」

「早く言ってくださいよ!」

ごめんごめん、と私は謝る。
みんなの真剣な顔がなんだかとても嬉しかったのだ。
仲間、という感じがして。

「いいんじゃないかって、言ってた」

「ですよねぇ!!」

三人が得意気な顔をする。

「企画書の書き方も全部教えてもらったよ!」

昨日のノートをデスクに広げるとみんなが頭を寄せあって食い入るように見ている。

「表紙、目次……このへんはすぐ出来そうだよね」

「企画の意図?」

「市場調査?」

「経営目標?」

「ひとつひとつ説明していくね」

昨日、森下さんに教えてもらったことを頭の中で整理しながら、ゆっくりと話していく。

私がきちんと理解できていなかった部分もあったけど、ほかの三人のうちの誰かが補ってくれたりもした。

面白いな、と思う。
世の中のいろいろな商品がこうやっていろんな人のアイディアで作られているなんて。

当たり前にお店に売られている文房具も、きっとそのほかのいろんな商品も全部、私が思いつかないたくさんの人が係わっていたんだ。

そして、今ここにいる四人で新しい商品を作ろうとしている。
そう考えるとわくわくした。

説明が進むにつれ、不安そうだったみんなの顔がどんどん明るくやる気に満ちあふれた顔に変わっていく。

変われる。
この課も、みんなも、そして陽子さんもきっと。

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