あなたが生きるわたしの明日
「これで……大丈夫かな?」

何度も何度も確認したのに、いざ提出するとなるとまだどこかにミスがあるような気がして不安になるものだ。

森下さんのアドバイスを受けて、さらに過去の社内コンペの資料すべてに目を通し、なんとか企画書は完成した。

正直、これでいいのかわからない。
なんせ初めて作ったのだから。

でも、ひとつだけ自信を持って言えることは、このラベルライターは資料整理課のみんなが仕事をしていく中で不便だと感じたところや、もっとよくしたほうがいいんじゃないかというアイディアを全部盛り込んで作られたということだ。

書類整理課の誰かひとりでも欠けていたら、きっとできなかった。
まだこどもを産んだこともないけど、この企画書はまるで私たちのこどもみたい。
それくらいにみんなの思いがつまった企画書だ。

そんな大事な企画書を持って、私は経営企画室というドアをノックする。

社長に直接手渡すのかと思っていたら、ほっちゃんに止められた。
どうやら、社長という人はそんなに気軽に会いに行けるものではないらしい。

いつも校長室にいる校長とは違うみたい。
校長先生は、花壇の花を眺めたり、朝門のところでおはようとみんなに挨拶したり、ずいぶん暇そうだったのだけど。

経営企画室にいた男の人に企画書を手渡すと、「書類整理課……?」と不思議そうな顔をされた。

「誰でも応募できると聞いたので」

そう説明すると、「確かにそういう規約にはなっていますが……」と戸惑った顔をされる。

あとひとことなにか言われたら言い返してやろうと思っていたら、「まあいいでしょう。お預かりします」と言われて受け取ってもらえた。

なにが『まあいいでしょう』だ。

腹は立つけど、ここで喧嘩して受け取ってもらえないと困るので、私は精一杯の笑顔を作って「お願いします」と言った。




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