あなたが生きるわたしの明日
家に着くとベッドに倒れ込んだ。
連日の企画書作りに加えて、今日はおじさんの下らない話しにも付き合ってあげたのだ。

「疲れた……」

ぽつりとつぶやく。
静かな部屋のなかに私の声が響く。

そういえば、いつの間にかテレビがなくても平気になっていた。
前までは静かなのか落ち着かなかったのに、今ではこの静寂さがとても心地よい。

天井の見慣れたシーリングライトを見ながら、さっきおじさんに言った言葉を思い返してみた。

『いなくてもいい人なんてひとりもいない』

はきだめ課と言われている課に集められた、他の課でお荷物と言われたみんなだけど、亜樹ちゃんには亜樹ちゃんの、凪くんには凪くんの、ほっちゃんにはほっちゃんのいいところがある。

亜樹ちゃんの正確で几帳面な仕事ぶりや、裏表がないまっすぐなところ。

凪くんの効率のいい仕事の進め方と、自分や相手を信じる心の強さ。

ほっちゃんの仕事をコツコツと真面目にするところと周りに気を配れる優しさ。

私は三人のそんなところを毎日見て、そして好きになった。
みんながみんな、なにかいいところを必ず持っていて、それはその人にしかないとっても素敵なものなんだ。

そして、思ったんだ。

会社になくていい課なんかない。
いなくていい社員なんかいない。

この世に、いなくていい人間なんてひとりもいない。

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