あなたが生きるわたしの明日
「明日からまた忙しくなりますね」

亜樹ちゃんの弾んだ声に、私は思わず微笑んだ。

さっき、みんなで経営企画部の人たちから説明を受けてきたのだ。
私たち四人を含めたプロジェクトチームが組まれ、さっそく明日から私たちの企画が実現に向けて動き始める。
新規事業立ち上げではあるけれど、私たちの配属先は変わらず『書類整理課』だ。
私たちがそうしたいと希望したから。

「一ヶ月間でまさかこんなことになるとはね……」

凪くんがしんみりと言う。

「情シス部から異動になって、まぁしばらくは羽を休めようかなくらいに思ってたんですけど……漫画もいっぱい読めたし、そろそろおっきな仕事したいと思ってたんすよね」

あはは、と笑う凪くんを亜樹ちゃんはあきれた顔で見るけど、その顔はどこか楽しそうだ。

「俺、仕事が楽しいっていう気持ち、忘れかけてたなぁ。課長がいなかったら、完全に忘れるところでしたよ」

凪くんはくしゃっと笑って頭をかいた。

「私も、いつの間にか自分はどうせ出来ない人間なんだってあきらめてた。最初の頃は、悔しいとかまた営業部に戻ってやるとか思ってたけど、いつの間にか仕事も楽だしこれでいいや、って思ってました。でも、憧れだった課長と一緒に働くようになって、どんどんみんなも自分も変わっていって、毎日すごく充実してて。自分もやればできるんだって自信がつきました」

亜樹ちゃんの目にうっすらと涙が光る。

それに気づいたとき、私も鼻の奥がつんとした。

「私も自分なんてって思うの、もうやめます。人と話すのは正直得意ではないけど、自分にもいいところがあるって気づけたから。課長のおかげで私変われた気がします。明日からもよろしくお願いします!」

ほっちゃんがそう言ってにっこり笑う。

『明日からも』

その言葉が私の胸にぐさりと突き刺さった。





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