あなたが生きるわたしの明日
「みんな……聞いて」

背筋をのばすと、みんなの顔を順番にゆっくり見る。
三十日間、一緒に働いた仲間たち。

「みんなと過ごせて楽しかった。私、自分なんていてもいなくても同じだって思ってたの。だけど、ここで働いてるうちに、みんなひとりひとりにいいところが絶対あるんだって気づいたんだ。いなくてもいい人なんてひとりもいない。亜樹ちゃんも凪くんもほっちゃんも、誰ひとり欠けてもだめなんだよね」

そして、きっと私も。
欠けてはだめだったんだよね。

「明日からも……よろしくお願いします。もしかしたら、私ちょっと変なことを言ったり、忘れてることとかがあるかもしれないけど、そこはみんなでフォローしてね」

無茶なお願いだよなぁと思いながらも私は言わずにはいられない。
明日には陽子さんにも戻っているのだ。
陽子さん、きっとものすごく戸惑うだろう。
いろんなことが三十日間で変わってしまっているのだから。

「なぁに言ってるんですかぁ、課長ぉ」

すっかり酔っぱらってしまった亜樹ちゃんがへらへら笑う。

「ありがとう」

「あらたまってなんですかぁ。なに泣いてるんですかぁ、課長」

ありがとう。
さようなら。

私の大事な仲間たち。





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