あなたが生きるわたしの明日
どっちにしても私が死んだことに変わりはなくて、もう生き返ることもできない。
サトルいわく、私は脳も心臓もこれ以上ないくらい『完璧に』死んじゃったらしいから。
それなら三十日間だけでも、たとえ他人の体だとしても、ひとつでもふたつでもやりたかったことをやった方が私のこのくやしさは軽減するのかもしれない。
やっても、やらなくても、私は死後の世界に『ご案内』されてしまうのだ。
そんなのやっぱりくやしい。
それなら、三十日間、他の人でもいい、やりたいことをやりまくってやる。
どうせ、私じゃないんだ。
お金もつかいまくって欲しい物も全部買って、散々遊び尽くしてやる。
それに……最後にひとつだけ願いを叶えてくれるって言ってるんだ。
level7のコンサートをアリーナ席で見せていただこう!!
「やるわ」
「承知しました。ちなみに、ご希望はなんになさるおつもりですか? 場合によってはダメなものもありますので……」
「えっとね、level7のドームツアー、アリーナ席で見たいの」
え、とサトルは一瞬動きを止める。
「なに? もしかして、ダメなの?」
「いえ。大丈夫だと思います」
「じゃあなによ」
「あ、いや。……本当にそれでいいんですよね?」
「生き返るのはなしなんでしょ? お願い事をみっつに増やすとかも無理なんでしょ? それなら、私の願いはこれしかないもん」
「そうですか。わかりました」
サトルはタブレットPCを再び操作し始めた。その姿を見ていたら、ふと胸に疑問が浮かんだ。
「そういえば、私に憑依された人はどうなるの?」
「これから説明いたしますので、少々お待ち下さい」
サトルは真剣な顔でタブレットPCを見ながら、うんうんとかほうほうとかなるほどとか呟いている。
しばらくそうしたあと、サトルはよし、と呟いてから顔を上げた。
「わかりました!」
その顔がとても満足そうだったせいで、なんだかよくわからないけど、とりあえず「おおー」と言いながら拍手を送った。
いやいや、わかりましたって!?
「もしかしてあんまり分かってなかったの?」
「え、だって、高齢の方しかご案内したことなくて……。しゃうがないじゃないですか。この制度使うの今回が初めてなんですもん。私だってなにも好き好んで高齢のお客様ばかり担当していたわけじゃないんです!」
「わかったわかった。で、大丈夫なの!?」
「……たぶん」
「たぶんじゃないでしょ!」
なんだか不安……。
サトルいわく、私は脳も心臓もこれ以上ないくらい『完璧に』死んじゃったらしいから。
それなら三十日間だけでも、たとえ他人の体だとしても、ひとつでもふたつでもやりたかったことをやった方が私のこのくやしさは軽減するのかもしれない。
やっても、やらなくても、私は死後の世界に『ご案内』されてしまうのだ。
そんなのやっぱりくやしい。
それなら、三十日間、他の人でもいい、やりたいことをやりまくってやる。
どうせ、私じゃないんだ。
お金もつかいまくって欲しい物も全部買って、散々遊び尽くしてやる。
それに……最後にひとつだけ願いを叶えてくれるって言ってるんだ。
level7のコンサートをアリーナ席で見せていただこう!!
「やるわ」
「承知しました。ちなみに、ご希望はなんになさるおつもりですか? 場合によってはダメなものもありますので……」
「えっとね、level7のドームツアー、アリーナ席で見たいの」
え、とサトルは一瞬動きを止める。
「なに? もしかして、ダメなの?」
「いえ。大丈夫だと思います」
「じゃあなによ」
「あ、いや。……本当にそれでいいんですよね?」
「生き返るのはなしなんでしょ? お願い事をみっつに増やすとかも無理なんでしょ? それなら、私の願いはこれしかないもん」
「そうですか。わかりました」
サトルはタブレットPCを再び操作し始めた。その姿を見ていたら、ふと胸に疑問が浮かんだ。
「そういえば、私に憑依された人はどうなるの?」
「これから説明いたしますので、少々お待ち下さい」
サトルは真剣な顔でタブレットPCを見ながら、うんうんとかほうほうとかなるほどとか呟いている。
しばらくそうしたあと、サトルはよし、と呟いてから顔を上げた。
「わかりました!」
その顔がとても満足そうだったせいで、なんだかよくわからないけど、とりあえず「おおー」と言いながら拍手を送った。
いやいや、わかりましたって!?
「もしかしてあんまり分かってなかったの?」
「え、だって、高齢の方しかご案内したことなくて……。しゃうがないじゃないですか。この制度使うの今回が初めてなんですもん。私だってなにも好き好んで高齢のお客様ばかり担当していたわけじゃないんです!」
「わかったわかった。で、大丈夫なの!?」
「……たぶん」
「たぶんじゃないでしょ!」
なんだか不安……。