あなたが生きるわたしの明日
「どうでしたか? 松川陽子さんとしての三十日間は」

サトルが唐突に話を変えた。
私が泣きそうだったかもしれない。
いや、なんにも気づいてなどいなかったかもしれないけれど。

「どうせそのタブレットPCで全部見てたんじゃないの?」

わざとそんなひねくれた言い方をすると、サトルはとんでもない!と否定した。

「私はそこまで暇じゃないんですよ」

「あぁ、そう。うーん……松川陽子さんの三十日間ね」

なにから話せばいいものか、と考える。
とにかく、いろんなことがあったから。

「あ、そうだ。無事に三十日間を過ごせたということは、すべての規約を守れたということだよね?」

「そうですね。お守りいただけなかった場合は強制的にこの部屋に帰されることになっておりますので、それは大丈夫かと」

よかった。
私は胸を撫で下ろした。

「最後の希望のことをご心配させていたのですか? levelなんとかのアリーナ席」

「あ、ううん。それもあるけど、陽子さんの人格を破綻させちゃうようなこと、結構してた気がしてさ。でも、大丈夫だったんだね」

「まぁ、割とギリギリのところでしたけどね……。それで、やりたかったことはお出来になれましたか?」

サトルはわずかに首をかしげてそんなことを聞く。

やっぱり見てたんじゃないの?
そう思いつつも、それでもサトルに聞いてもらいたいと思った。

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