あなたが生きるわたしの明日
「そうねぇ。金曜日にお酒を飲むっていうのはできたかな」

お父さんと飲むっていうのは叶えられなかったけど。
でも、お父さんが置いてくれたビール、ちゃんと飲んだからね。

「そうですか」

「それと……大人買いっていうのかな? 服とか化粧品とかいっぱい買った」

陽子さんのお金だけど。
陽子さん、明日からもちゃんとメイクしてくれるかな?

「浴衣で夏祭りに行ってみたかったとおっしゃっていましたが?」

「それは無理だった。てか、今三月だし、夏祭りないし。そもそも恋なんてしてる暇なかったのよ」

それどころか、おじさんをばっさり振ってやったし。
これに関しては、私がとやかく言える問題じゃないから、できるだけ我慢したんだけど。

「この世に未練はございませんか?」

「あるわよ」

私は即答する。

「むしろ、陽子さんになる前よりもずっと死んだことを後悔してる。この世界にはまだまだ私の知らないことがいっぱいあって、私には自分でも気づけていない可能性があるって気づいたから」

悔しいと。

まだまだ生きていたかったと私は思う。




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