God bless you!
〝もしチームが試合に勝ったら、あたしは学校を辞めます〟
随分、様子が違うと思った。どうしてここで逆ギレなのか。一体何が気に入らなくて。ちょっと俺が指示した、先を越されたと感じた、ただそれだけの事でここまで酷い仕打ちなのか。
右川は足元に転がった缶を拾い上げると、それをまた容赦なく俺にぶつけた。缶は胸に命中して、中味がこぼれて体操服を汚す。こうなると酷いなんてもんじゃない。
「何すんだよ!」
右川は、落ち着き払って、「さーせん。それ全部片しとけ」と命令した。
その瞬間、俺の中で何かがズレて、急に意識が遠くなるような感覚に襲われる。スイッチが入るとはこういう時だ。ぷつん、と恐らく何かが外れて止まらなくなる。
「……そんな態度でいいのか」
帰りかけた右川の背中に投げかけた。
俺は静かに立ち上がって、あちこちの汚れを払う。
「あいつ、ほんとに従兄弟か」
それに反応して右川が振り返る。目を剥く。それを見て、もう脅迫でも何でもとにかく目の前の右川をヤリ込めたい衝動に駆られた。
「あの男と、おかしな事になってんじゃないの。ヘラヘラしてるけど、本当はチクられんのが怖いんだろ。ギョウザなんて、あんな口止めが通じると本気で思ってんのか。俺が原田先生にひとこと言ったらどうなるか」
勢いだけで一気にまくし立てた。だが最後には、もう俺は……強く目を閉じる。
最低だ。
いくらキレたからといって、言っちゃいけない事がある。自分の人間レベルがドン底に落ちていくのを感じた。ツツジの抜け道を教えてくれた、親切な大先輩の穏やかな笑顔が浮かんでくる。
どう見ても右川とあの人とは、良好な親戚関係という以外に有り得ない。それを十分に知っていながら、それなのに……〝沢村に脅された〟と右川にチクられたら、こっちがお終いだ。もう朝比奈と仲良く『やました』には行けないだろう。
「あんたって、極悪なんだね」
右川は凍りつくような視線を向けながら、ジャージのポケットから何かを取り出して口に放り込んだ。クチャクチャと、ガムを噛みはじめる。そんな適当な様子を眺めていると、一瞬でも感じた罪悪感が無駄に思えてくる。
「ゴミを投げつけて……おまえ以上の極悪がどこにあるんだよ」
「あーこんな学校でも急に心配になってきた。真面目な子は他にも居るっていうのに、こんな性悪が生徒会に君臨していいのかな」
「誰が生徒会だ。何度も言わせんな」
「男子は他にも居るっていうのにね。わざわざこんなのを選んじゃう朝比奈さんも女子としてどうなの?その感性を疑っちゃうよね」
「ここで朝比奈は関係ないだろ」
俺の本質がどうの朝比奈がどうのと聞いていると、さっきの矢吹先輩のイビリを、そのまんま繰り返されているような気がした。くそチビが。偉そうに。こんな戯れ言をまともに聞くな、俺。
「さっきのって、部活の先輩?」
どこから聞いていたのか知らないが、「何だよ。弱みでも握ったつもりか」
「てゆうか、あたし、あの先輩の気持ち、すっげぇ分かるなぁ~と思ってさ」
ワザとらしく穏やかな表情を取り繕って、右川は空を見上げる。
「大して実力も無い1年なんか出すの止めてくださいって、先生に言いたくなるっていうか」
「だから何だよ。先輩よりは俺の方が戦力になるっていう判断なんだから、仕方ないだろ」
そこで右川は、俺に向けてにっこり微笑んだ。こっちの言い分を「うんうん」と聞き流す。
「何だよ急に。気が悪い」
「分かってないね。先輩はさ、あんたのために言ったんだよ」
は?
「1年生というだけで狙われて集中攻撃じゃないの?あんた潰されちゃうんじゃない?試合ってさ、うちの体育館でやるんでしょ?ナカチュウ友達も見に来るんでしょ?当然、朝比奈さんも応援に来るんだよね?」
ワザとらしい優しげな声色。それが耳障りだと感じても、1つ1つに事実がなぞらえてあるという、ただそれだけの事で傾聴してしまう。
「それでもし自分のせいで負けたりしたら恥ずかしくない?部活だって、普通に出づらくなると思うし。また別のナカチュウ先輩に呼び出されたりなんかして。あぁ、月曜日が憂鬱だァ」
「月曜日……」
もし負けたら……1年なんか出すの止めようぜ。それに近いあたりを矢吹先輩は吹聴して回るだろう。他の先輩も追随する可能性がある。これから先、どんなに頑張っても1年生のレギュラー入りは消えるかもしれない。おまえらのせいで!と、しつこく吠える黒川が浮かんだ。俺にとって、部活は針のムシロか。
小さな動揺を、右川は見逃さなかった。
「どうした?さっきまでの根拠のない自信満々とドヤ顔はどうした?」
俺は目を逸らした。
「そんな面倒な試合、最初から出なきゃいいじゃん。サボっちゃえば?見たいテレビがあるとか言ってさ。どうせ生徒会やってたらバレーどころじゃないんだし。まぁ書記なんかやっても後になって、あんな使えないヤツ選ぶんじゃなかったよなーなんて陰口叩かれたりしてね。またまたまた別のナカチュウにさ」
右川はケケケと笑う。
俺は何故、言われるがまま、黙って聞いているのか。
何か言い返せ、俺。
1度、深呼吸して。
「100歩譲って負けたとする。それが俺のせいかどうかなんて、誰に分かるんだよ」
勝つも負けるもチーム次第。
それを言うと、
「それって、負けたら誰かのせいかもしれない。勝ったら自分のお陰かもしれない。みたいな事?つまり6人の中途半端がボール遊びか。面白ぉーい♪」
喧嘩を売られている気がした。ゲームの意義&チームの士気を疑われては黙っていられない。
「おまえら、どうせサッカーとか野球とか、それも男の顔ばっか見てんだろ」
「うん」
肩落ちしてる場合じゃない。
「バレーはな、身体能力だけじゃなくて、周囲への気配りとか、瞬間的に次を察する能力とか、メンバーそれぞれの緻密な働きが連動して、そしてそれが最高の攻撃に繋がる。上手くチームが機能すれば、6が10にも20にもなる。だからバレーってのはな」
今度はおまえが傾聴する番だとばかりに、俺は昏々と説いた。
右川は心持ち首を傾げて、一見、素直に聞いている。だが何となく様子がおかしい。口を開けて閉じて、目を開けて閉じて……見ていると、それをひとしきり機械的にやっているのだ。せっかく気持ちよく喋っているというのに、気になって素通りもできない。「何だよ、それは」
「〝目を閉じて口を開けたら見えない。口を閉じて目を開けたら見える〟の実験。暇だったから」
ムッとくるというより、不気味が過ぎる。
「と、とりあえずおまえは無関係だろ。関わっても居ないくせに偉そうなこと言うな」
俺はトドメを刺した(筈だ)。チームの為に一矢報いてやったぞ。(多分。)
そこにスマホが、にゃあー!と鳴く。右川は弾かれるようにそれを取り出し、俺に背中を向けて一心に覗き始めた。メールか。ラインか。表情を180度変え、それを読みながら小さく笑い、ニコニコと嬉しそうに返信している。本筋、こっちを忘れ去って画面に夢中だった。
俺は、ずっと横目で睨んでいる。
こんなヤツに待たされている……そんな気がした。話は終わっている。何を期待して待つというのか。そんな必要、何処にもない。バカバカしい。さっさと立ち去れ、俺!
イライラを金網に当たり散らしていた所で、右川がスマホを閉じた。
「おーい、沢村くぅーん」と、これみよがしに注意を引いたと思ったら、
〝もしチームが試合に勝ったら、あたしは学校を辞めます〟
「どうかな?これであたしも無関係じゃなくなるでしょ」
人差し指で鼻を突き上げたと思ったら、「ぶぅぅ」と挑発的な態度で、右川は俺と対峙した。
ガサツな子豚め。
生意気な家畜が。
笑ってたまるか。
「確かに」
受けて立つとばかりに、こっちも真正面を向く。「非常識な女が消えて、俺らハッピー。補習が無くなって先生も助かる。無関係バンザイ」
お互い冷たく睨み合った。と思ったら、「うし!」右川はまた突然に態度を変えて、「特訓してやろっか?」と、金網沿いに捨てられていた雑誌を次々と拾い上げると、「ほい。ほい」と、俺に向かって次々と投げてきた。どれもこれも避けきれず、体のあちこちに命中する。「止めろよ!」泥で汚れた雑誌をまともにくらって、体操服もサポーターも、何もかもが、どんどん真っ黒になった。
「ダメダメじゃん。あんたやっぱ出ない方がいいって。沢村バレー部辞めろってばよ。ぶぶぅ」
ゲゲゲ!と高笑いする右川を見ていたら、もう我慢できなくなって、俺はゴミの雑誌を右川に投げつけた。それが顔面に命中。「うぎゃうっ!」
女子に向かって何て事を……なんて、露ほども感じないぞ。
「辞めるのはおまえだ!おまえなんかサッサと学校出てけ!」
酷いこと言ってる……なんて、露ほども感じないからな!
去り際、「書記さーん、忘れないでねぇ」と、背後から右川にダメ押しされた。
「てめーこそ忘れんな。2度と書記とか言うな。殺すぞ!」
そう叫んだ時、胸のあたりにズキンとくる。
〝殺す〟なんて、冗談にも滅多に使わない俺なのに。
……どんどん極悪になってゆく。
成り行き上、俺はタチの悪い賭け事に身を沈めてしまった。
とにかく明日の試合、何が何でも負けられなくなってきた。
右川は足元に転がった缶を拾い上げると、それをまた容赦なく俺にぶつけた。缶は胸に命中して、中味がこぼれて体操服を汚す。こうなると酷いなんてもんじゃない。
「何すんだよ!」
右川は、落ち着き払って、「さーせん。それ全部片しとけ」と命令した。
その瞬間、俺の中で何かがズレて、急に意識が遠くなるような感覚に襲われる。スイッチが入るとはこういう時だ。ぷつん、と恐らく何かが外れて止まらなくなる。
「……そんな態度でいいのか」
帰りかけた右川の背中に投げかけた。
俺は静かに立ち上がって、あちこちの汚れを払う。
「あいつ、ほんとに従兄弟か」
それに反応して右川が振り返る。目を剥く。それを見て、もう脅迫でも何でもとにかく目の前の右川をヤリ込めたい衝動に駆られた。
「あの男と、おかしな事になってんじゃないの。ヘラヘラしてるけど、本当はチクられんのが怖いんだろ。ギョウザなんて、あんな口止めが通じると本気で思ってんのか。俺が原田先生にひとこと言ったらどうなるか」
勢いだけで一気にまくし立てた。だが最後には、もう俺は……強く目を閉じる。
最低だ。
いくらキレたからといって、言っちゃいけない事がある。自分の人間レベルがドン底に落ちていくのを感じた。ツツジの抜け道を教えてくれた、親切な大先輩の穏やかな笑顔が浮かんでくる。
どう見ても右川とあの人とは、良好な親戚関係という以外に有り得ない。それを十分に知っていながら、それなのに……〝沢村に脅された〟と右川にチクられたら、こっちがお終いだ。もう朝比奈と仲良く『やました』には行けないだろう。
「あんたって、極悪なんだね」
右川は凍りつくような視線を向けながら、ジャージのポケットから何かを取り出して口に放り込んだ。クチャクチャと、ガムを噛みはじめる。そんな適当な様子を眺めていると、一瞬でも感じた罪悪感が無駄に思えてくる。
「ゴミを投げつけて……おまえ以上の極悪がどこにあるんだよ」
「あーこんな学校でも急に心配になってきた。真面目な子は他にも居るっていうのに、こんな性悪が生徒会に君臨していいのかな」
「誰が生徒会だ。何度も言わせんな」
「男子は他にも居るっていうのにね。わざわざこんなのを選んじゃう朝比奈さんも女子としてどうなの?その感性を疑っちゃうよね」
「ここで朝比奈は関係ないだろ」
俺の本質がどうの朝比奈がどうのと聞いていると、さっきの矢吹先輩のイビリを、そのまんま繰り返されているような気がした。くそチビが。偉そうに。こんな戯れ言をまともに聞くな、俺。
「さっきのって、部活の先輩?」
どこから聞いていたのか知らないが、「何だよ。弱みでも握ったつもりか」
「てゆうか、あたし、あの先輩の気持ち、すっげぇ分かるなぁ~と思ってさ」
ワザとらしく穏やかな表情を取り繕って、右川は空を見上げる。
「大して実力も無い1年なんか出すの止めてくださいって、先生に言いたくなるっていうか」
「だから何だよ。先輩よりは俺の方が戦力になるっていう判断なんだから、仕方ないだろ」
そこで右川は、俺に向けてにっこり微笑んだ。こっちの言い分を「うんうん」と聞き流す。
「何だよ急に。気が悪い」
「分かってないね。先輩はさ、あんたのために言ったんだよ」
は?
「1年生というだけで狙われて集中攻撃じゃないの?あんた潰されちゃうんじゃない?試合ってさ、うちの体育館でやるんでしょ?ナカチュウ友達も見に来るんでしょ?当然、朝比奈さんも応援に来るんだよね?」
ワザとらしい優しげな声色。それが耳障りだと感じても、1つ1つに事実がなぞらえてあるという、ただそれだけの事で傾聴してしまう。
「それでもし自分のせいで負けたりしたら恥ずかしくない?部活だって、普通に出づらくなると思うし。また別のナカチュウ先輩に呼び出されたりなんかして。あぁ、月曜日が憂鬱だァ」
「月曜日……」
もし負けたら……1年なんか出すの止めようぜ。それに近いあたりを矢吹先輩は吹聴して回るだろう。他の先輩も追随する可能性がある。これから先、どんなに頑張っても1年生のレギュラー入りは消えるかもしれない。おまえらのせいで!と、しつこく吠える黒川が浮かんだ。俺にとって、部活は針のムシロか。
小さな動揺を、右川は見逃さなかった。
「どうした?さっきまでの根拠のない自信満々とドヤ顔はどうした?」
俺は目を逸らした。
「そんな面倒な試合、最初から出なきゃいいじゃん。サボっちゃえば?見たいテレビがあるとか言ってさ。どうせ生徒会やってたらバレーどころじゃないんだし。まぁ書記なんかやっても後になって、あんな使えないヤツ選ぶんじゃなかったよなーなんて陰口叩かれたりしてね。またまたまた別のナカチュウにさ」
右川はケケケと笑う。
俺は何故、言われるがまま、黙って聞いているのか。
何か言い返せ、俺。
1度、深呼吸して。
「100歩譲って負けたとする。それが俺のせいかどうかなんて、誰に分かるんだよ」
勝つも負けるもチーム次第。
それを言うと、
「それって、負けたら誰かのせいかもしれない。勝ったら自分のお陰かもしれない。みたいな事?つまり6人の中途半端がボール遊びか。面白ぉーい♪」
喧嘩を売られている気がした。ゲームの意義&チームの士気を疑われては黙っていられない。
「おまえら、どうせサッカーとか野球とか、それも男の顔ばっか見てんだろ」
「うん」
肩落ちしてる場合じゃない。
「バレーはな、身体能力だけじゃなくて、周囲への気配りとか、瞬間的に次を察する能力とか、メンバーそれぞれの緻密な働きが連動して、そしてそれが最高の攻撃に繋がる。上手くチームが機能すれば、6が10にも20にもなる。だからバレーってのはな」
今度はおまえが傾聴する番だとばかりに、俺は昏々と説いた。
右川は心持ち首を傾げて、一見、素直に聞いている。だが何となく様子がおかしい。口を開けて閉じて、目を開けて閉じて……見ていると、それをひとしきり機械的にやっているのだ。せっかく気持ちよく喋っているというのに、気になって素通りもできない。「何だよ、それは」
「〝目を閉じて口を開けたら見えない。口を閉じて目を開けたら見える〟の実験。暇だったから」
ムッとくるというより、不気味が過ぎる。
「と、とりあえずおまえは無関係だろ。関わっても居ないくせに偉そうなこと言うな」
俺はトドメを刺した(筈だ)。チームの為に一矢報いてやったぞ。(多分。)
そこにスマホが、にゃあー!と鳴く。右川は弾かれるようにそれを取り出し、俺に背中を向けて一心に覗き始めた。メールか。ラインか。表情を180度変え、それを読みながら小さく笑い、ニコニコと嬉しそうに返信している。本筋、こっちを忘れ去って画面に夢中だった。
俺は、ずっと横目で睨んでいる。
こんなヤツに待たされている……そんな気がした。話は終わっている。何を期待して待つというのか。そんな必要、何処にもない。バカバカしい。さっさと立ち去れ、俺!
イライラを金網に当たり散らしていた所で、右川がスマホを閉じた。
「おーい、沢村くぅーん」と、これみよがしに注意を引いたと思ったら、
〝もしチームが試合に勝ったら、あたしは学校を辞めます〟
「どうかな?これであたしも無関係じゃなくなるでしょ」
人差し指で鼻を突き上げたと思ったら、「ぶぅぅ」と挑発的な態度で、右川は俺と対峙した。
ガサツな子豚め。
生意気な家畜が。
笑ってたまるか。
「確かに」
受けて立つとばかりに、こっちも真正面を向く。「非常識な女が消えて、俺らハッピー。補習が無くなって先生も助かる。無関係バンザイ」
お互い冷たく睨み合った。と思ったら、「うし!」右川はまた突然に態度を変えて、「特訓してやろっか?」と、金網沿いに捨てられていた雑誌を次々と拾い上げると、「ほい。ほい」と、俺に向かって次々と投げてきた。どれもこれも避けきれず、体のあちこちに命中する。「止めろよ!」泥で汚れた雑誌をまともにくらって、体操服もサポーターも、何もかもが、どんどん真っ黒になった。
「ダメダメじゃん。あんたやっぱ出ない方がいいって。沢村バレー部辞めろってばよ。ぶぶぅ」
ゲゲゲ!と高笑いする右川を見ていたら、もう我慢できなくなって、俺はゴミの雑誌を右川に投げつけた。それが顔面に命中。「うぎゃうっ!」
女子に向かって何て事を……なんて、露ほども感じないぞ。
「辞めるのはおまえだ!おまえなんかサッサと学校出てけ!」
酷いこと言ってる……なんて、露ほども感じないからな!
去り際、「書記さーん、忘れないでねぇ」と、背後から右川にダメ押しされた。
「てめーこそ忘れんな。2度と書記とか言うな。殺すぞ!」
そう叫んだ時、胸のあたりにズキンとくる。
〝殺す〟なんて、冗談にも滅多に使わない俺なのに。
……どんどん極悪になってゆく。
成り行き上、俺はタチの悪い賭け事に身を沈めてしまった。
とにかく明日の試合、何が何でも負けられなくなってきた。