6人目
乱闘事件
その男は、実に尊大だった。

人混みの中で他人に気を遣う事もなく、通りの真ん中を歩き、流れに逆らって歩く。

肩がぶつかり、小柄な女性がよろめき、老婆が押し退けられて転倒した。

しかし、男は気遣う事もない。

知らぬ顔をして歩く。

まるで無人の野を行くが如く。

まるで己唯一人存在しているかの如く。

「おいっ」

見かねたサラリーマン風の男性が、男を呼び止めた。

「……」

無言で男は振り返る。

「今…俺の事を呼んだのか?」

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