6人目
「いや…この世界だけじゃあない…」

部隊長の背後で声がした。

…若い男が立っていた。

黒いキャスケットとロングコートを着用した、長身の男。

ハンドポケットのその姿は、どこか威圧的な外見にも見える。

「ディア・ボロスを野放しにしておけば、全ての並行世界が蹂躙されかねない。奴は『滅びの5人』の『6人目』になるかもしれない男だからな」

「な、何だ君は…い、一般人が立ち入るんじゃない。ここは危険だ」

若い男に避難指示を与える部隊長だったが。

「アンタこそ引っ込んでな」

彼は逆に部隊長を押し退けた。

「この世界は勿論、並行世界をも揺るがすほどの力を持つと言われる、人類に災厄をもたらす人外達の総称。人智を超えた能力を有し、生と死すら捻じ曲げて自由に操れる、神とも魔ともつかない存在。人間という種の存続さえ危ぶまれるような超越種。伝承として語り継がれているし、文献にもある『事実』。5人が5人とも無敗の化け物達として知られており、1人1人が世界を滅ぼす存在とされる。真祖の来栖 恭太郎(くるす きょうたろう)、悪魔のルドルフ・クラインリーゼ・リリア、不死の王(デミリッチ)ベナル・ヨアキム・シュターセン、真祖セシル・カイル、悪魔・黒十字 邪悪(くろじゅうじ じゃあく)…そいつらと同等かもしれない存在だからな」

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