6人目
ある男の手記
…傷は手当てが施されていた。

手当てといっても、あくまで応急処置。

後でしっかりとした治療を受けなければならないが。

よく、あのディア・ボロスと対峙して生き残れたものだ。

恐らくは狂史郎に降りた悪神が、己の宿主を死なせまいと守護した結果。

尤も、悪神も自分の宿る肉体がなくなるのがまずいと考えただけで、狂史郎に善い感情を持っている訳ではなかろうが。

「…で…」

ディア・ボロスが立ち去り、大災害が起きた後のような街のど真ん中。

路上に寝かされていた狂史郎は身を起こし、傍らに立つ若い女を見上げる。

「お前は何だ。お前が俺に手当てをしたのか」

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