6人目
夜。

南条の屋敷に、大祓詞(おおはらえことば)が響き渡る。

最も実用性のあるオールマイティな祝詞だ。

部屋の四隅には盛り塩。

しっかりとした結界が張られている。

…部屋の結界の中心には、狂史郎の姿があった。

熱に浮かされ、魘されている。

その皮膚を食い破るように、百足やゲジ、ゴキブリや蛆、蛇や蜥蜴が這いずり出てきている。

「羯諦 羯諦 波羅羯諦 波羅僧羯諦 菩提薩婆訶!」

祖父が般若心経の、波動的に最も強力な一文を詠む。

大きく痙攣するように、狂史郎の体は跳ね上がった。

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