春の私と秋の君。
校門を出ると、人影が一つだけ見えた。誰の だろう。私には友達が少ないからな。由美(ゆみ)ちゃんかな?智(とも)ちんかな?こんな遅くまで流石に待ってくれないか。見せかけだけの友達なんだから。

「よお、大丈夫か?」

男だった。さっきの私を心配してくれた彼だった。

「……もういいから」

話したってムダだ。だってこんなこと、相談できる間柄でもないし。別に関係ないじゃん。とっとと帰らないと、家が大変なことになっちゃうし。

「…そっか。……じゃあ友達になろうぜ」

「は?」

意味がわからない。なんでそうなるの?だいたい私と友達になってなんの得があるんだよ。金?宿題やらせる?暇つぶし?虐めるのに丁度いい?絶対に嫌だ。これ以上増えたらやり切れなくなっちゃう。ただでさえ最近お母さんと男が荒れてて、手に負えなくなってきてるんだから。そんな時にパシリとかレイプとかされてたら時間がなくなっちゃう。

「だから、友達。とりあえず今日のお詫びに、今度奢らせてよ。なんなら今からでもいいし。あっ!ダメか、両親心配するよね」

「別に…」

そう、心配なんてしてくれるわけない。

「マジ?じゃ今からラーメン屋行こうぜ!」

いやいやいやいやまあ確かに別にって言ったけど!そーいう事じゃなくて。ああもう面倒くさい。

「ごめん、」

「え、おいちょっ」

私はごめんのひと言だけ残して家に走った。家は学校から15分の坂の上の一軒家。ゆっくりとドアの前に立って深呼吸すると、何かガラス物が割る音が私の耳に突き刺さる。

ガシャン!!

また1枚お皿割ったのかな。あーあ、あと片付け面倒臭いんだけどなぁ。
ゆっくりとドアを開けるとすごい勢いでお母さんが玄関にやって来た。今にも頭の血管が切れそうな程に血相変えて。

「…おっせぇんだよこのクソ女がぁぁああ!」

あ、また殴られる。今夜も長く続きそう。そっか、また男が今日も他の女のところに行ったのか。だから荒れてるんだいつもより。

「ごめんなさい、ごめんなさっ…!」

もうなんも聞こえてないんだろうな。早く終わらないかな。こんな毎日も、私の人生も。



死にたい

消えたい


ここに自分がいる理由は

殴るのに丁度いいぬいぐるみ


都合のいいおもちゃ


消えたい

死にたい




あの桜の花びらのように_____。







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