S級イケメン王子に、甘々に溺愛されています。
「そろそろ祭典も始まるし、ウチらもホールに向かうかー」
火神さんが、ぐーんと伸びをする。
「祭典って、やっぱり偉い人もたくさん来るのかな……」
私はラスボスのことが気になって仕方ない。
そわそわして落ち着かない。
「あー、そうだね。青薔薇学園での生徒の取り組みとか知ってもらうために、理事長の親しい友人や来賓の方の招待は毎年してるからね」
「だ、だよね……」
その中にラスボスもきっといるだろう。
理事とは今でも親しい仲だと、本人が言っていたし。
「でも、今年は残念ながら称号を手にした生徒はいないみたいだから、恒例のセレモニーはなしだね」
表彰式みたいなものはやらないってことなんだろう。
「その代わりってわけじゃないけどさ、婚約発表があるらしいって噂は流れてる……」
婚約発表……。
どことなく気まずそうに火神さんは目を伏せた。
それに対して、私は小さく頷き返す。
その噂ならもうずっと聞いていて、その度にチクチクと胸が痛んだ。
婚約発表をするふたりをとても見届けられそうもないけど。
でも、椿が私に『信じて』と言ってくれたから。