S級イケメン王子に、甘々に溺愛されています。


「そろそろ祭典も始まるし、ウチらもホールに向かうかー」


火神さんが、ぐーんと伸びをする。



「祭典って、やっぱり偉い人もたくさん来るのかな……」



私はラスボスのことが気になって仕方ない。


そわそわして落ち着かない。



「あー、そうだね。青薔薇学園での生徒の取り組みとか知ってもらうために、理事長の親しい友人や来賓の方の招待は毎年してるからね」


「だ、だよね……」


その中にラスボスもきっといるだろう。


理事とは今でも親しい仲だと、本人が言っていたし。



「でも、今年は残念ながら称号を手にした生徒はいないみたいだから、恒例のセレモニーはなしだね」



表彰式みたいなものはやらないってことなんだろう。



「その代わりってわけじゃないけどさ、婚約発表があるらしいって噂は流れてる……」



婚約発表……。


どことなく気まずそうに火神さんは目を伏せた。


それに対して、私は小さく頷き返す。


その噂ならもうずっと聞いていて、その度にチクチクと胸が痛んだ。


婚約発表をするふたりをとても見届けられそうもないけど。


でも、椿が私に『信じて』と言ってくれたから。

< 307 / 358 >

この作品をシェア

pagetop