S級イケメン王子に、甘々に溺愛されています。
なんでそんなに長いんでしょうか……。
未だに庶民の私には全くわからないその車は、子供の頃から椿が乗っているものだ。
やば……!!
こっちに来る……!?
今会ったらマズいかもしれない。
私は競歩大会を意識するかのようにせかせかと歩き出した。
だがしかし、車のスピードに勝てるわけもなく、視界の隅に無駄に長い車のボディが入ってくる。
ゲッ……!!
追い越していったと思ったらその車は私の少し先で停車した。
なぜ止まる……!?
少々気まづさを感じながら、このまま知らんぷりをして通り過ぎようとしたのだけど……
────ウィーン…
車の後部座席の窓がゆっくりと降りて、
「───やっぱり、明里だろ?」
と、あの頃よりもずっと低くなった声が耳に届いた。