夢の言葉と失われた追想【夢の言葉続編④】
(2)
「!っ…?」
咄嗟に身構えて、様子を伺うように茂みの方を見ていると…。
「く〜ん…。」と、少し寂しそうな鳴き声を上げながら小さな白い犬が現れる。
「!…ワンちゃん。
ヴァロン、ワンちゃんだよ〜可愛い!」
犬を見て嬉しそうにはしゃぐアカリを腕から降ろすと、彼女は身を屈めて犬を「おいで〜。」と呼んだ。
すると、その犬は人によく慣れている様で…。嬉しそうに尻尾を振るとアカリの元に駆けてくる。
こんな所に何で犬が…?
他の宿泊客の飼い犬、か…?
突然の犬の登場に呆気に取られる俺に、アカリは犬を撫でながら無邪気に微笑む。
「ヴァロン、モフモフだよ〜!
この子すごく可愛いね〜!」
///…可愛いのは、お前だよ。
彼女の笑顔に思わずそう思って、俺はつい表情を緩ませた。
……。
普段の俺なら、こんな状況を警戒すべきなのに…。完全に、ミスっていた。