夢の言葉と失われた追想【夢の言葉続編④】

「君どうしたの〜?迷子〜?」

犬に語り掛けるアカリの横で、すっかりその雰囲気に和んでいた自分も身を屈めた瞬間。


「メリー?…メリー?どこ〜?」

「!?ッ……。」

中庭に響く女性の声と、足音。
ハッとした時。それはもうすぐ近くに迫っていて、身を隠す事は難しい状況だった。


「アカリ、絶対声出すな。」

「!…え?っ…わ……ッ?」

声をかけると、俺は浴衣の上に羽織っていた上着を脱いで、バサッとアカリの顔を隠すように被せた。

離れの夜中の中庭だって、気が緩み過ぎてた。
俺は今、変装も何もしていない”ヴァロン”の姿のまま。
万が一俺を知っている人物に、一緒に居るアカリを晒す訳にはいかなかった。


間一髪、アカリに上着を被せた直後に…。
建物の陰から、犬の飼い主らしき女性が現れる。
なるべく顔を見られない様に、不自然に思われない程度に身体の向きを変えてその場をやり過ごそうとしていると…。
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