夢の言葉と失われた追想【夢の言葉続編④】
「!…メリー!ここにいたの?」
犬を呼ぶ、女性の声。
その声に、耳を疑う。
っ……嘘、だろ?
その女性の声に、俺は聴き覚えがあった。
女性に名前を呼ばれて「キャンキャン!」と、犬が駆けて行く方にチラッと視線を向けて…確信する。
間違いない。
その人物は俺がマオの時に顔を合わせていた、取引先の社長令嬢のミネアだった。
勿論、ミネアと接していた時はマオの姿。
あの時の俺と今の俺は、見た目も雰囲気も違う。変装もキャラ作りも完璧だった自信はある。
……だが。
ミネアは父親に負けない人を見る目利きと、鋭い勘を持っていた。
俺が少しでも隙を見せれば、マオだと悟られる可能性は充分にある。…厄介な人物だ。
出来ればこのまま犬を連れて、この場を去ってほしい。
そう思って黙っていたが、ミネアはこちらに気付いた様に俺とアカリに視線を向ける。