夢の言葉と失われた追想【夢の言葉続編④】
「…今日こちらの離れを使われている方ですか?うちの子が迷い込んでしまって、申し訳ありません。
いつも宿泊する際はこちらを利用しているので、この子勘違いしてしまったみたいで…。」
無視しようと思った。
しかし…。ミネアは犬を抱き上げると、そう言いながら歩み寄ってくる。
仕方ない。と、思い俺はアカリを自分の背中で隠す様にしてミネアの方を向いた。
「…いや、別に。犬は悪くねぇよ。
謝罪はいいから、さっさと出て行け。常連かは知らないが、今日ここを使ってんのは俺だ。」
マオの時よりも少し低い冷めた口調でそう言うと、ミネアは立ち止まり、驚いた表情で俺を見ている。
そして、俺に言った。
「……ヴァロン?
…っ…まさか、夢の配達人の…ヴァロン?」
ミネアの言葉に、マオだと気付かれていない事に安堵しながらも…。やはり俺をヴァロンだと知っている以上、油断は出来ない。
それに、少し間違えれば…。
ヴァロンがマオだと、一気に特定されてしまう。それだけは何としても避けたかった。