夢の言葉と失われた追想【夢の言葉続編④】

「……謝んな。」

そっと抱き寄せて、さっき強引に扱ってしまった彼女の身体を包むようにしながら、上着を退けて優しく口付ける。


「じゃ、お互い様って事にしようぜ?
これからは、一緒に気を付けよう。な?」

「…うん。
…でも、さっきの女性。ヴァロンの事を誰かに言ったり…しないかな?」

心配そうな声と表情。
俺は手を伸ばしてアカリの頬に触れると、安心させるように微笑んだ。


「…大丈夫だよ。
あの女性は、そんな人じゃないから。」

「!……。
ヴァロン、あの人…知ってるの?」

「ああ、ミネアって言ってさ。長期任務の時、取引先のお嬢さんだったんだ。」

俺がそう答えると、アカリはとても驚いていた。

冷静になってみると…。
マオだとバレていないのならば、姿を見られたのがミネアで良かったと今は思う。

あの女性は真っ直ぐな性格で口も固い。
社長令嬢の仮面の時の軽そうな印象とは違って、他人にここで俺を見た事は言わないだろう。
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