夢の言葉と失われた追想【夢の言葉続編④】
幼い頃からずっと、ヴァロンは人とは違う容姿で苦労して…。
今も、仕事以外でもありのままでは在れなくて、自分を隠して生きている。
出掛ける事やデートに、慣れていないんじゃない。
部屋にこもっているのが好きなんじゃない。
ヴァロンにとって外の世界に、いつだって本当の自由なんてなかったんだ。
「…私の前では、無理しないでね?」
せめて自分の前では自然体で居て欲しい。
私にはたくさん甘えてほしい。
水のボトルを枕元置いて、ヴァロンのサラサラの髪を撫でていると、「んっ…。」と小さな声を漏らした彼が傍に座っていた私の浴衣の裾を握ってきた。
///…可愛いなぁ。
子供が甘えてくるようなその仕草に胸がキュンッとときめいて、ついつい飛び付いてしまいそうな衝動を抑える。
こんな可愛い姿を見せてくれるのは自分だけであってほしい。
そう思うと、何気にさっき中庭で会った女性の姿が頭に浮かぶ。