夢の言葉と失われた追想【夢の言葉続編④】
ヴァロンがあの場をやり過ごす為にした行動にさえも、ミネアさんは不快に思うどころか逆に好意を抱いていた気がする。
ヴァロンは悪い男のフリをしたけど、私からしたらあの声にも仕草にもドキドキして、心と身体が震えた。
きっと、ミネアさんも同じだと思った。
……。
もう、ミネアさんには会わないでほしいな…。
強くそう思って、私の浴衣の裾を握り締める彼の左手薬指に光るお揃いの指輪を見つめる。
ヴァロンがくれた夫婦の証。
そこに自分の左手を重ねると、少しだけ気が安らいだ。
「……眠れねぇのか?」
「!…ヴァロン。」
指輪を見つめて表情を緩ませていた私がハッとすると、いつの間にかヴァロンが目を覚まして見上げていた。
優しい瞳に見つめられて、私は首を横に振ると微笑む。
「ううん。喉が渇いて目が覚めちゃったの。
ヴァロンもお水飲む?」
「…ん、そうだな。飲みたい。」
問い掛けにそう答えたヴァロンに水のボトルを差し出すと、彼は受け取らず、私の頬に手を伸ばして親指で唇をなぞる。