夢の言葉と失われた追想【夢の言葉続編④】

不思議な人だった。
嬉しくて楽しくて。彼が読んでいた雑誌の事を私が尋ねると、あるページを開いて見せてくれた。

そこに書かれていたのは、伝説の夢の配達人と呼ばれる”ヴァロン”という人の事。
リオン様はヴァロンが夢の配達人としてどんな活躍をして、どうすごいのか…。まるで、自分の事のように話してくれた。
すごくファンなんだって、すぐに分かってしまうくらい輝く笑顔だった。


……でも。
最後に寂しそうに、こう言ったの。

『僕は彼に、昔すごく酷い事を言ったんです。
彼はもう、僕の事なんて覚えていないかも知れないけど…。もう一度、会いたいな…。』

そう言って…。
ヴァロンが載ったページを見つめる、リオン様の黒縁の眼鏡の奥の瞳は…とても美しかった。

……。

惹きつけられて、胸が高鳴った。
多分、私はこの時…。
リオン様に、初恋をした。
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