夢の言葉と失われた追想【夢の言葉続編④】
アカリと、こんな恰好で歩きたくねぇな…。
初めて、好きな女性の前でこんな姿を晒したくないと思った。アカリの前で、自分の納得いかない容姿を見せるのは恥ずかしい。
きっと彼女だって、嫌な思いをすると思った。
……でも。
アカリや、大切なものを守る為には仕方ない事なのだと自分に言い聞かせて…。俺は深呼吸すると、アカリの待っている部屋に行く為の扉を開けた。
「よっ!お待たせ、行こうか!」
なるべく明るく声を弾ませて笑った。
夢の配達人の仕事で、今まで数え切れない程のキャラを演じてきたんだ。
今更、なんて事ない。
いつもみたいに、完璧にやり遂げよう。
恥や嫌な個人的な感情なんて、演技で封じ込めてしまえ。
……。
そう思いながらも、俺は荷物を整理して待っててくれたアカリの顔を見る事が出来なかった。
サングラスをしているのをいい事に視線は合わせず、彼女の足元に置いてある手荷物を持ち上げる。