夢の言葉と失われた追想【夢の言葉続編④】

「そりゃあ、若いうちから色恋沙汰が噂になれば別だけど…。貴方はもう何十年も人の夢を叶え続けて、結構ないい歳でしょう?
貴方くらいの男前が、今まで恋人がいない方が可笑しいわよ。」

そう言ってミネアは片手で俺のサングラスを少しズラすと、微笑みながら見つめる。
その俺を見つめる眼差しは暖かくて、彼女の言葉と表情は、今まで当たり前だと思っていた常識を覆すものだった。


「本当のファンって、そういうものだと…わたくしは思うのだけど?
…それに。貴方自身の気持ちも、そうであってほしいと望んでいる筈よ。
そうじゃなきゃ、変装を得意とする天才ヴァロン様が昨夜みたいに油断したり、私に二度も見破られるような変装はしない。…でしょ?」

心地良い、優しい声。
ミネアの、まるで俺の心を説明されたような言葉に…。つい、微笑ってしまった。


「……参ったな。」

溜め息を吐きながらも、その通りだと思った。
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