夢の言葉と失われた追想【夢の言葉続編④】
「…これが、再検査の結果です。」
私は再検査の結果が詳しく書かれた資料をテーブルに置き、ヴァロンさんに説明していく。
診断結果を簡単に言うと、脳腫瘍。
ヴァロンさんの場合、他の場所から転移したものではなく、脳そのものから腫瘍ができる原発性脳腫瘍だ。
原発性脳腫瘍は、良性と悪性とに分けられ、診断は手術で取り出した腫瘍を顕微鏡で観察して最終的に決める事になる。
一般に悪性脳腫瘍は周囲に根を生やすように発育し、それに対し良性脳腫瘍は周囲の脳とはある境界をもって徐々にまわりを圧迫しながら大きくなってしまう。
「…とにかく、少しでも早く手術をする事をお勧めします。
症状が進めば、頭痛や吐き気、眼のぼやけ。徐々に進行すると麻痺や感覚障害、言語の障害なども表れてくる恐れが…。」
「……そうなると。
間違いなく仕事は、出来なくなっちゃうよな。」
私の説明を聞いて、ヴァロンさんは苦笑いを浮かべながら寂しそうに言った。