夢の言葉と失われた追想【夢の言葉続編④】
「色々気を使わせてごめんね。忙しいのに、ありがとう。」
「っ…何を言ってるんですか。私は、当たり前の事しかしていません。」
医師でありながら、脳外科が専門ではない私には出来る事が限られている。
悔しくて悔しくて、膝の上で手をギュッと握り締めていると…。
「そんな事ないよ。
勝手かも知れないけど、俺はこうやって話してくれるのがホノカさんで良かったって思ってる。
昔から、何かあると診てくれたもんね?みんな担当に付くのを嫌がる気難しい俺にも、いつも態度を変えないでくれて…嬉しかったよ。」
自分の無力を惜しむ私に、子供みたいに屈託のない表情で微笑んでくれた。
昔から変わらないのは、ヴァロンさんの方だ。
誰よりも優しい、暖かい心の持ち主。
神様。
どうか、この人の命を奪わないで下さい。
任務に向かう為医務室を後にするヴァロンさんの背中を見送りながら、私は心からそう願った。
……
………。