夢の言葉と失われた追想【夢の言葉続編④】
「誰?とは、ずいぶんと酷いご挨拶だ。
元婚約者の事など覚えていない位、余程ヴァロンに愛されているのですね。アカリ様?」
「!……元、婚約…者?」
言われて初めて思い出す。
ヴァロンが長期任務に行っていた際の雑誌や新聞の記事に写っていた、男性の姿。
私の元婚約者の、アラン様。
「…な、なぜ?
なぜ…あなたが……ここに…?」
私が震え声で尋ねると、ソファーに横たわっている猫リディアがアラン様を見て、シャーッと弱々しくも威嚇した。
「!っ…もしかして、ッ…あなたがリディアをっ…?!」
「?…リディア?ああ、あの白い猫ですね。
私は昔、泥棒猫に嫌な思い出があってね。猫は大っ嫌いなんですよ。
うるさいので、少々黙らせました。」
私の問い掛けに…。平然と、サラッと冷たい瞳と口調で私に告げるアラン様の姿に、”酷い”と思いながらも声が出せない。
そんな、固まって動けない私をアラン様は引き寄せると、ギュッと羽交い締めにするようにキツく抱き締めた。