夢の言葉と失われた追想【夢の言葉続編④】
(3)
可愛い女の子になろう。
女性として生まれながら、人とは違う珍しい容姿で苦労して…。
幼い頃から我慢ばかりで、そう在りたくてもなれなかったリディア母さんの代わりに、その夢を叶えてあげたかった。
王子様とお姫様が幸せになる絵本。
何度も、何度も…。
ページが擦り切れるくらいに読んだ世界。
引き込まれて、大好きだった。
……。
でも…。
…でも、ね。
私がその絵本の世界で憧れたのは……。
お姫様やヒロインじゃなかったんだ。
「……リディア母さん。
……。ごめんなさい……。」
自然と口から出た私の呟きに、「あ?」と目の前の男の手が一瞬止まる。
私はキッと決意を固めると、自分の胸倉を掴んでいる男の手を取って、思いっきり背負い投げで床に叩きつけた。