夢の言葉と失われた追想【夢の言葉続編④】
……。
静まり返る部屋。
「…余計な事すんじゃねぇぞ。
俺一人で行かねぇと、アカリが…どうなるかっ……。」
俺はマスターとシュウに背を向けて、部屋を一歩踏み出した。
「っ……ヴァロン、様?」
「っ……?」
部屋を出た廊下に響く、聞き慣れた声。
俯いたまま長い前髪の隙間から、ちらっと横目で見ると…。驚いた様な、怯えた様な表情で俺を見るレナとレイ。
……そして。
レナの腕に抱かれているヒナタが、アカリにそっくりな表情でキョトンとして俺を見てた。
くずっていたヒナタをあやす為に、二人は抱きながら散歩してくれていたのだろう。
ついさっきまで泣いていたのか、ヒナタの瞳がまだ少し潤んでいる。
「っ……。」
ヒ、ナ……ッ。
ヒナタを見たら、少しだけ冷静になって、自我が戻ってきた気がした。
思わず、名前を呼んで…抱き締めたくなる。
……。
でも、見せられないっ…。
今のこんな汚い俺の表情を、見せたくないッ…。
ヒナタの純粋な綺麗な瞳にだけは、今の俺を映して欲しくなかった。